子どもの連れ去りはなぜ起きるのでしょうか。背景には日本ならではの理由が隠れているようです。離婚トラブルの「子どもの連れ去り」を、家族の問題としてではなく社会の問題として解説します。
家族問題の渦中にいると自分や相手を責めがちになるので、苦しさが増すかもしれません。しかし夫婦や親子の問題は、社会と密接に関係しているので大きな視野も大切です。
家族問題は相談しにくい気がします。自己防衛手段として「俯瞰」をお守りにしてみてくださいね。
子どもの連れ去りとは?
子どもの連れ去りは日本では慣習的に起きている離婚トラブルです。まずは子どもの連れ去りの概要を確認します。
子どもの連れ去りは離婚トラブルの大きな種
子どもの連れ去りとは配偶者の同意なく、子どもを連れて別居を始めることです。大きな問題になりやすい離婚トラブルで、親子の生き別れなど、社会問題としての声が大きくなっています。
子どもの連れ去りは国際的には誘拐
子どもの連れ去りは国際的には「実子誘拐」です。つまり犯罪行為。国際結婚した日本人妻が子どもを日本に連れ帰り、父子を断絶させる事例が国際問題に発展しています。
国連子どもの権利委員会やEU議会から勧告を受けており、国際指名手配されているお母さんもいるようです。
日本の慣習が犯罪行為!?
子どもの連れ去りをする親のメリットデメリット
子どもの連れ去りをする親のメリットとデメリットを3つづつあげます。
子どもの連れ去りメリット①親権者になりやすい
子どもを連れ去って離婚すると、そのまま親権者になりやすい社会背景があります。弁護士が連れ去り手順を教えてくれるケースもありますが注意が必要です。
子どもの連れ去りメリット②金銭を受け取れる
子どもを連れ去ると離婚するまで婚姻費用を請求できます。離婚すれば養育費や財産分与、状況によっては慰謝料も受け取れます。もちろん所得などの状況に応じた金額です。
子どもの連れ去りメリット③子どもの心身を囲える
子どもを連れ去る親は子どもと一緒に暮らせます。多くの時間を共に過ごせるので親子の心が通いやすくなるでしょう。新しい環境で子どもと生活をリセットできるので、親子で心機一転しやすいかもしれません。
子どもの連れ去りデメリット①未成年者略取で捕まる
子どもの連れ去りは本来なら「誘拐」です。状況によっては未成年者略取で捕まるケースがあります。子どもの連れ去りによる問題拡大から、法の適正運用の声が警察署へ届いているようです。
※参考:「子どもの連れ去りは未成年者略取罪」 警察庁が明言、共同養育支援議連で|SAKISIRU
子どもの連れ去りデメリット②貧困家庭になる
ひとり親家庭の貧困率は約50%といわれています。仕事や子育て環境によっては貧困家庭になる可能性が高いです。元パートナーに支払い能力がなければ養育費も入ってきません。
子どもの連れ去りデメリット③子どもの信頼を失う
子どもの気持ちを無視した連れ去りでは、我が子の信頼を失う代償が伴います。別居する親に会わせない、悪口を言うなど、自分の感情を子どもより優先させる親は要注意です。
子どもの連れ去りでなぜ親権者になれるのか
子どもの連れ去りが起きるのは監護者や親権者になりやすいからです。背景はこんな感じ。
- 親権者の判断基準の「原則」を満たす
- 同居する親の意見が誰よりも優先
- ジェンダーギャップによる社会通念
親権者の判断基準の「原則」を満たす
裁判所が親権者を選ぶ判断基準には原則があり、子どもの連れ去りで効力を発揮するのがコレです。
- 継続性の原則
結果として一緒に暮らしている親が親権者としてふさわしいと判断します。 本来は「子どもの生活を変えないのが子どものためになる」との解釈のようです。
つまりなんか変。
同居する親の意見が誰よりも優先
裁判所では同居する親の意見が優先されがちです。極論として、同居親に大きな問題がなければ、同居親が「親権ほしい」と言えば親権者になれます。
子どもの連れ去りと親子断絶を許容する裁判所では、本質からズレた前提で話が進むのでどうしようもありません。つまり親の立場に優劣がつきます。
同じ目線で子どものケアを
ジェンダーギャップによる社会通念
子どもの連れ去りをする親は女性が多く、裁判所では90%の割合で母親が親権者の指定を受けます。「母性優先の原則」があるように「子育て=女性」という社会通念が連れ去りを許容しているようです。
結果として子どもの連れ去りで親権者になれてしまいます。
子どもの連れ去り離婚訴訟で世界が注目!?
子どもの連れ去りが注目された離婚訴訟があり、2022年7月に東京家裁で判決がでました。親子分断5年目の母目線で紹介します。
国際指名手配中のお母さんが親権者に
離婚訴訟の背景はこんな感じです。
- 夫のDVを理由に妻が連れ去り別居
- 夫への恐怖心から妻は父子断絶へ
- 裁判所でDV認められず
- 夫(お父さん)と子の関係は良好
- 裁判所は面会交流の疎外を問題視
- 妻(お母さん)親権者へ
詰まらずに流れる不思議背景。
類似する容疑者お母さんと私の相違点
容疑者お母さんと母(私)の配偶者との別居背景は似ています。ただし相違点が3つあり、先にあげる2つは結果を大きく左右しているようです。
- 子の連れ去り審判での高裁の判決
- お母さん→監護者に指定
- 母→監護者として不適格
- 前提の子どもとの同居の有無
- お母さん→同居
- 母→別居
そして最大の相違点はコレ。
- 親子の分断状態
- お母さん→自分の感情から父子分断
- 母→タロジロを父に会わせて母子分断
なんでやねん。
裁判所に関わる前提として「子どもと同居している」のがいかにポイントかがうかがえます。
【参考記事】
※フランス当局が日本人妻に逮捕状発行で注目の”連れ去り”離婚訴訟 敗訴の夫側は「日本の司法に失望」|デイリー新潮
※海外でも大きく報じられた異例の離婚訴訟で判決 ネットでは誹謗中傷も、妻は「怒りと恐怖を感じる」|YAHOO!JAPANニュース
子どもの連れ去りを起こす単独親権の諸問題
子どもの連れ去りは「単独親権」から派生する考え方、「子どもの所有化」が背景にありそうです。 単独親権は明治民法の家制度の名残で家父長制を踏襲しています。つまり「支配と従属」の価値観が埋め込まれています。
だからこそ子どもを連れ去ったまま、親子を引き離す感覚に違和感をもたないのでしょう。
単独親権制とジェンダーギャップ
子どもの連れ去り親に女性が多い背景には、ジェンダーギャップ思考が隠れています。単独親権制は性別役割分担の価値観が強いからです。
実際、2022年の日本のジェンダーギャップ指数は146ヵ国中116位。ほかの指標も並べます。いかに女性が働きにくい環境かが想像できるでしょう。
- ひとり親世帯の親の女性率は約90%
- そんなひとり親世帯の貧困率は約50%
- 貧困率約50%はOECD加盟35ヵ国中34位
- なのに就業率は比較国中で高い傾向
※参照:男女共同参画局|内閣府
単独親権制と社会の相関性はこんな感じ。
- ジェンダーギャップ大きい
- 一人あたりの名目GDP低い
- 出生率低い
※参照:子育て改革のための共同親権プロジェクト 基本政策提言
世界との感覚のズレは半世紀?
世界の国々もかつては単独親権制でしたが、1900年代に次々と共同親権へ移行しています。子どもは親の所有物ではなく社会全体で守るべき存在として考えられたからです。
親権制の移行は親権の概念をこんな感じに変遷させています。
- 家のため
- 親のため
- 子のため←日本は2022年現在ココ目指してる
単独親権制が残る日本では親のために親権があるという感覚が根強いのではないでしょうか。世界とは半世紀以上のズレがあります。
単独親権と並行する教育の歩み
「子どものため」の概念が希薄な日本だからこそ、教育の遅れにも鈍感なのかもしれません。たとえばICT教育での世界比はわかりやすいです。
- ICT教育利用率7.3%OECD最下位
欧米との差は日本の都市部で30~40年くらいで、田舎だと+10~20年だとか。ちょうど半世紀で親権制移行の流れと似た歩みです。
人間力を育めない教育を受けた親世代
日本の教育基本法は2006年に改正されています。理由は人間力の低下が危惧されたから。それまでの約60年間、1947年から同じ枠組みの教育を日本人は受けています。
今の子育て世代は1960~80年代生まれが中心です。そして子育て世代の親世代は単独親権の家制度が色濃く感じられる時代を生きています。
つまり現在現役の親は「今を生き抜く」ための教育を受けていないことになります。人間力低下が危惧されたままの社会で育ったからかもしれません。
子どもの連れ去りは人権問題で愛の欠乏
子どもの連れ去りは「子どもを所有」する意識が生み出す人権問題です。婚姻外とはいえ単独親権制が残る2022年現在、私たちは親権を親のためと勘違いしたまま21世紀を歩んでいます。
だから親は子どもの愛し方を勘違いし、その親も勘違いした愛され方で育ってきた可能性があります。結果として家族はどんどん空洞化。家族が崩壊するから日本が崩壊しています。
ガラパゴス日本で生き抜くには愛がいるみたい。
おしまい。
きっと大丈夫。
あなたもがんばって。