共同親権とはどんなシステムで、日本の親権制にはどんな問題があるのかをご紹介します。
親権制から分断親子に陥った母による、当事者目線から問題の本質をつく説明です。
この記事を読むと家族の概念や子育ての幅が広がります。ついでに日本沈没の意味を親目線で理解できます。
家族は社会の基盤!
ライフジャケット記事です。
沈没にお備えください。
ちなみに母はカナズチです。
共同親権とは父母双方がもつ子どもの利益のための権利と義務
共同親権とはお父さんもお母さんも親権をもち、子どもを守り育んでゆくシステムです。
「親権」とは,子どもの利益のために,監護・教育を行ったり,子の財産を管理したりする権限であり義務であるといわれています。親権は子どもの利益のために行使することとされています。
引用元: 親権者 – 法務省
共同親権と日本の親権制度
共同親権が日本で認められているのは婚姻中のみです。婚姻外では「単独親権制」が採用されています。
共同親権は世界スタンダード
共同親権は婚姻状態によらず、世界スタンダードして受け入れられています。G20を含む法務省24ヵ国調査の結果では、単独親権の国は「インド」と「トルコ」のみです。
上記画像は小学生とのイベントで使用した資料です。共同親権と単独親権、日本の親権制度の説明をしてから、世界の親権制を予想してもらいました。
参加者の約8割の子どもたちが、世界の国々も単独親権制だと答えています。
共同親権が婚姻中だけの日本の問題点
共同親権が婚姻中のみの日本で起きている問題を5点みていきます。つまり単独親権制による社会の歪です。
- 親権争いが激化して離婚が終わらない
- 親権者になるために「子の連れ去り」が起きる
- 親権者と子どもがなぜか会えない
- 親権者と非親権者で親に優劣がつく
- 親権制の価値観のズレが国際問題に発展
親権争いが激化してなかなか離婚できない
離婚による単独親権を求めて、父母間の葛藤はさらに高まります。日本では離婚後の親子の交流が父母間で不均衡になるからです。結果として起きることは次の3つ。
- 離婚協議が長期化
- 人生のリスタートが遅れる
- 家族がますます崩壊
親子にとって三方悪し。
親権者になるための「子の連れ去り」が起きる
離婚前に子どもを連れ去り別居して、親子を断絶させる問題が大きなトラブルとなっています。連れ去る理由は、親権者を決める裁判所の以下の判断基準。
「継続性の原則」
裁判所で親権を争うとき、子と同居している親が優位になる傾向が日本にはあり、継続性の原則はこれに当てはまります。
さらに「母性優先」の基準もあるので男親は不利です。裁判所での離婚で母親が親権者に指定される割合はなんと約90%。
親権者と子どもが会えなくなる
子どもと同居する親の意向により、別居する親に子どもが会わせてもらえないケースがあります。
離婚協議中や係争中で、別居親にまだ親権がある状態でも会えなくなるので摩訶不思議です。
摩訶不思議が起きるのは、裁判所や弁護士によっては、親子が会えない状況を黙認するからです。さらに、子どもより同居親の意見を優先させる傾向もみられます。
裁判所職員の一例は「離婚調停の軸を面会交流に!調停委員との感覚のズレにため息」へどうぞ。
DVや虐待などの問題をもつ親が同居親になった場合、子どもが大きな不利益を被るかもしれません。 また確たる証拠がなければ問題のある親も単独親権者になれます。
別居親は手と足がでないどころか声すら届けられないケースもあり、ひいては子どもの「逃げ場」「心のよりどころ」の搾取といえそうです。
謎だらけ。
親権者と非親権者で親に優劣がつく
親権のあるなしで父母間に優劣がつきやすく、非親権者になると親として子育てできない状況になりがちです。
自分の感情を子どもより優先する親権者の場合、子どもを人質にしたような交渉が起きます。
繰り返しになりますが、子どもと別居する親はたとえ親権者であっても、同居する親より劣勢な立場になりやすいです。子どものために養育費を支払っていても、同居親の意向で子どもに会えない親もいます。
親権制の価値観のズレが国際問題に発展
親権制や親子の価値観について、日本と世界各国にはズレがあり、国際問題に発展しています。主に「子の連れ去り」による親子断絶についてです。国際的には「abduction」つまり「拉致」として認識されています。
子どもの権利が守られていない状況について、世界からあがっている声の一例は次のとおりです。
- 2019年国連からの再勧告
- 2020年EU議会からの要請
- 日本人女性の国際指名手配
2020年に施行されたハーグ条約と国内法の矛盾も指摘されているようです。
【参照一覧】
▶国連から見た日本の子どもの権利状況 |日本弁護士連合 子どもの権利委員会
▶日本における子の連れ去りに関する欧州議会決議の概要(仮訳)|外務省欧国政策課
▶ハーグ条約と日本 -日本人女性による国境を越えた子の「連れ去り」を経験した父親たち|ヒューライツ大阪
共同親権のメリットデメリット各3選
共同親権のメリットデメリットを3つづつ厳選してみます。
- 共同親権のメリット
- 親子の絆と多様性が育まれる
- 子育ての金銭的時間的な分担
- ジェンダーギャップの是正に期待
- 共同親権のデメリット
- 子どもが両親の板挟みになる
- 居住地の選択肢が狭まる
- 再婚による家族の複雑化
メリットは単独親権の社会背景が、メリットに見せるだけかもしれません。つまり「当たり前」のような気がします。なので「両親で子どもを育てる」がベースの世界であれば、デメリットもデメリットにならないでしょう。
共同親権のメリット①親子の絆と多様性が育まれる
子どもが両親から愛情を受けて育まれる、親子として当然の価値観が社会に根づきます。父も母も子育てに関わる家族概念は、あらゆる差別と偏見を緩和させるでしょう。
家族は社会の基盤です。結婚や離婚、家族についての価値観がアップデートされると、社会もガラリと変容してゆきます。
なにより共同親権は「子どもの所有化」とい単独親権の概念を消してゆくはずです。日本にチルドレンファーストの意識が芽生えるので、多様性の世界が広がって生きやすくなるでしょう。
共同親権のメリット②子育ての金銭的時間的な分担
離婚後であっても、父母で子育てする感覚が備わるので、金銭も時間も分担できます。親に心の余裕がうまれるでしょう。
日本では女性への子育て圧が異常に高い傾向にあり、婚姻中でもひとりで苦しむケースがあります。
また、金銭の余裕は精神的な安定になるので、子育てに好循環です。
共同親権のメリット③ジェンダーギャップの是正に期待
共同親権は単独親権による「男性への女性の従属化」概念を変えてゆくので、子どもへのジェンダーギャップ植え付けを回避できます。
家庭内での性別役割分担が、無意識下で男女格差の概念を次世代に繋げているからです。
単独親権制は家父長制を踏襲しています。私たち日本人はジェンダーギャップを婚姻中の家庭で育んでいるような状況です。「単独親権とジェンダーギャップ」についてはこちらもで触れています。
共同親権のデメリット①子どもが両親の板挟みになる
両親が未熟だと、子どもが父母の板挟みになるかもしれません。婚姻中の家庭で夫婦喧嘩が起きたときのようなイメージです。
一方で婚姻中の板挟みこそ影響が大きそうです。なぜなら子どもと同じ屋根の下に両親がそろっていて、子どもに逃げ場がないからです。
婚姻中は共同親権なので、想像しやすいデメリットと言えそうです。
共同親権のデメリット②居住地の選択肢が悩ましい
父母の家が離れすぎていると、日常的に子どもが親に会いづらくなります。どのような親子の交流が子どもにとって最善となるのか、子どもの意見を尊重するのが大切です。
単身赴任の家庭であれば、県外海外などの距離感もありえるので、親子や家族の価値観しだいかもしれません。
仮に法改正するのであれば、制度に組み込まれる可能性もあるでしょう。とにかく、子ども目線で考えれば問題なし。
共同親権のデメリット③再婚による家族の複雑化
再婚により家族構成が複雑化し、意思決定や各種手続きなどが煩雑になるかもしれません。現状でも不思議な制度があるので、法改正するなら丁寧な議論がいるでしょう。
たとえば現状、私の愛息子たちが養子縁組されると、私の知らないうちに、息子たちは誰かの子どもになってしまいます。ついでに私の親権回復は困難に。
親権者の変更は単独親権者からでないとできないからです。 普通養子縁組は、産みの親の承諾なく、我が子が他人の子になるシステムです。しかも裁判所を通さず、役所でサクっと手続きできます。怖っ!!
寄り添った制度が求められます。多くの国々が共同親権を採用して運用歴も長いので、参考データがたくさんあるのが素晴らしい。
共同親権の賛成反対への誤解点
共同親権に対する賛成反対において、議論にあがりやすい3つの誤解点をみていきます。
- DVや虐待から守れない
- 子どもの負担を大きくする
- 婚姻中共同親権も機能不全?
共同親権の誤解①DVや虐待から守れない
親権はそもそもDVや虐待から身を守る制度ではありません。DVや虐待をサポートしてくれるのは「DVや虐待を支援する制度」です。守られないのであれば支援制度に問題があります。
DVや虐待の支援制度の不備を理由に、親子を引き裂く単独親権制度を推奨するのは本末転倒です。悪循環が起きています。
子どもが大切に育まれる環境であれば、DVや虐待する親が誕生しません。 DVや虐待してしまう原因の一つが、単独親権制によって歪められた家族観であり、そこで育った子どもが親になることです。子育ては世代間連鎖します。
DVや虐待など子どもの利益を害する親には、「親権停止」や「親権喪失」の利用が現在も可能です。
▶敵意帰属バイアスで夫婦仲崩壊?原因や改善策を知ってストレスを減らそう
共同親権の誤解②子どもの負担を大きくする
子どもの負担を大きくするのは「親」です。親権制ではありません。 なにをもって負担とするかは、親ではなく子ども目線での判断が大切です。
離婚後の共同親権では、父母が「一緒に養育」するわけではありません。取り決めを軸に子どもを最優先にして各々で子育てをします。もちろん一緒にできるならそれもよし。
婚姻中の共同親権下で子どもに負担をかけている夫婦より、離婚後の共同親権下の両親の方が、健全に子育てできるケースもありそうです。
私みたいなアホ親が子どもに負担なだけ。
共同親権の誤解③婚姻中の共同親権も機能不全?
日本では婚姻中は共同親権ですが、家庭内において親権の権利や義務を守る術がありません。
夫婦どちらか一方の親が養育を放棄しても、ペナルティや支援がほぼないからです。 他方で非親権者の親は養育費を入れないと、給与の差し押さえなどが発生します。
たとえば養育費を家計に入れない親でも、婚姻中であれば共同親権を保持できます。子どもの利益を害するにも関わらず親権者です。
共同親権の導入へ動きが活発化
共同親権の導入に向けて国内の動きが活発化しています。最近の動きはこんな感じです。
- 2019年 親権にまつわる国賠訴訟の提訴が増加
- 2021年 家族法にまつわる法制審議会の発足
- 2022年 法務省が共同親権の導入を提案
2022年8月には法制審議会の中間試案が取りまとめられ、パブリックコメントも実施される予定です。共同親権導入について本格的な検討が始まったといえるでしょう。
親権制に私たち日本人が興味をもち、丁寧な議論を交わすことが大切な気がします。
【参照】
※親権関係国賠訴訟|共同親権国賠を支える会
※離婚後の共同親権を提案へ 法務省、法制審部会に 8月にも試案|毎日新聞
共同親権は日本再生の最後の希望かも
共同親権は崩れかけの日本を再生させる希望です。なぜなら家族の概念を再整備でき、社会を根底から立て直すきっかけになるからです。
日本の単独親権制は歪んだ社会通念を作り上げてきました。時代が進むにつれて、その社会通念は現実世界との激しい乖離を生み、私たちの生きづらさとなっています。
そして生きづらさは家族を空洞化させて、愛を育めない家族を再生産する結果に。日本の幸福度が低いゆえんです。
愛がないと絆は育めません。絆で繋がれる場所は安心できる場所です。そして安心できる場所で愛は育まれてゆきます。
制度や社会通念によって親子の絆を奪い取るなんて切なすぎます。世界を創造するのは私たちの意識です。
などなどと母は思うのであります。
おしまい。
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